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小屋の旅 008 (稲木小屋)

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8.稲木小屋

 遠出をしようとクルマを走らせると、1日のうちに1度や2度は必ず出くわすのが道路工事の現場。その工事現場にも仮設の小屋は付きものですが、ほかにもやたらと目に入ってくるのが細長い小屋です。これは地域を問わず、いろんなところにあります。しかも瓦屋根に鬼瓦をのせた立派なものから、ビニールシートやトタンをかぶせた、いたって粗末なものまで、多種多様なものが存在しています。ある意味、地域性や建て主の性格が出やすい小屋だともいえます。

 このような縦に長い小屋は必然的に用途が限られ、ほとんどは「稲木(イナキまたはイナギ)」の構造材を収納する建物に使われ、地方によっては「ハサ」や「ハザ」「ハゾ」などとも読んでいます。稲木は、田んぼに人間の背丈ぐらいの柱を等間隔に何本も立て、そこに1本の横木を通して稲の束を引っ掛けて干すものです。この横木を4段ほどの高さに組んだ格子状の大型の稲木もあり、いずれも秋の刈り入れ時期だけに使うものなので、それ以外の季節は田んぼのアゼなどに造った稲木小屋に収納しておきます。稲木の材料には細長い丸太や竹竿のほか、近年は鉄パイプ製もよく見かけるようになっています。ただ、秋に稲木がさかんに造られたのは1960年代ごろまでです。

 写真の稲木小屋は、岐阜県高山市上宝の田んぼのアゼにあるもので、比較的しっかりとしたものです。建物側面の下半分にグレーのトタンが張られています。これはおそらく雪に埋もれないようにする対策で、雪の心配がない地域では柱と梁の骨組みだけの開放型です。小屋というより運動会に使うテントのようなものです。写真からは、冬にもかかわらず小屋のなかに稲木材が見えないことから、本来の稲木による天日干しはおこなわれていないようで、小屋はなにか別の用途に使われている感じがします。

 そこでひとつ考えられるのは稲わらづくりのための稲木です。稲わらの用途は広く、畳床や縄(ロープ)、家畜の飼料、さらには農家の野菜づくりにも使われていますが、保存するには乾燥させる必要があります。そこで脱穀したあとの稲わらを乾燥させるもので、干しかたは従来の稲木と同じです。稲わらに穂が付いているかいないかのちがいだけです。自家用の畑に使う程度の量なら稲木材は4、5本もあれば十分なので、残りは処分されるのが一般的です。写真では稲木材が見えませんが、おそらくグレーのトタンの下のほうに少し残しているのではないかと思います。それと、小屋の右側3分の1ほどの側面が茶色のトタンにおおわれていますが、ここは乾燥した稲わらなどを保管するスペースではないでしょうか。稲木小屋の再利用としては、このような方法がもっとも理にかなっています。