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小屋の旅 009 (海越しの立山と小屋)

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 9.海越しの立山と小屋

 3000m級の山々が連なる立山連峰を借景に、すぐうしろに富山湾が迫る「海越しの立山連峰と小屋」です。その立山には古くから信仰の山としての雄山(標高3003m)があり、そこの「室堂小屋」は日本でもっとも古い山小屋として国の重要文化財になっています。吹けば飛ぶような小屋が重文になるというのは、あまり例がないと思いますが、重文としてはいちばん高地の建物だそうです。その山小屋はもちろん見えませんが、この写真は氷見市側から撮ったものです。

 手前のシルエットになった小屋の右側に、ほかの山より少し高いフラットな山並みがかすかに見えます。雄山はそのへんにあるはずで、その頂きへの登り口に山小屋が建っています。築が1726年、それが1980年代まで普通に宿泊施設として使われていたもので、気候条件の厳しい標高2450mの室堂平にあって、何百年もよく持ちこたえてきたものです。シンプルな構造の小屋だからこそ、長い年月を生き抜くことができたのかもしれません。山小屋の主人が「そろそろ建て替えるか」と解体したところ、骨組みなどはほとんど建築当時のままだったといいます。写真の小屋とはまったく関係のない話ですが、小屋にもいろんなものがあるものですね。

 長年、山岳地帯で多くの命を守り、いまは国のお宝におさまっている室堂小屋は、名実共に雲の上の存在といったところで、写真の断崖絶壁の地に建つこの小屋は、その室堂小屋からみれば名もない路傍の石ではあります。とはいうものの、こちらも海に面して、日々、潮風を浴びながら状態よく維持されています。かつては畑用の資材などを保管していたようですが、現在、その畑は作物を作っていません。周囲にも畑があることから、もしかすると小屋だけは他の畑用に使っているのかもしれません。それにしてもロケーションに恵まれたすばらしい土地ですが、畑としてはかなり苦労をさせられたようで、それは小屋の様子からもうかがえます。

 シルエットの小屋は、屋根の右側に雨どいが横に飛び出しています。これは意図的にこうしたもので、屋根から雨水を雨どいで集め、畑に使うための工夫です。この土地は水の確保が非常に難しく、ほとんど雨水に頼るしか手がなかったようです。横に飛び出した雨どいの下に水を溜める容器が置かれていますが、いまは畑がつくられていないために、雨水の受け皿は使われていません。近年、エコの観点から庭や花壇などの水やりに雨水の利用が叫ばれています。ところが畑では昔から必要にかられてこのような方法をとっていたわけです。それにくわえてこの畑では、小屋左横に波トタンを載せただけの構造物が設置されています。これも海側に少し傾斜させ、集水装置として雨水を集める仕組みになっています。小屋の屋根からの水だけでは足りなかったようです。