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小屋の旅 027 (もつれた小屋)

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27.もつれた小屋

 長野市郊外のリンゴ園で見かけた小屋です。あきらかに自己流による建てかたで、屋根などは普通、ホームセンターにある波トタンを使ったりしますが、この建て主はそのような平凡なやり方をあえて避け、合板で葺き、その上に防水ビニールシートをかぶせるこだわりようです。簡単にトタンなどが手に入る時代に、こんなに手のこんだ屋根普請はあまりお目にかかったことがありません。また、リンゴの直売用に使う棚でしょうか、正面左に見えるチェーン吊りのテーブルも技ありで、一般に2本の足をたして事足りるところを、「それでは物足りない」とばかりに、チェーンで吊るしていますが、これなどもおしゃれなひと工夫です。“労を惜しまず”といった美学でしょうか。

 向かって右上にポストの投函口のような穴があいています。このセンスもまことにユニークというか、このようなものは、凡人は板きれで隠しておしまいとなりますが、このオーナーは穴を穴としてそのまま生かすことで、「なんに使うのかな?」といったミステリアスな表情を意図的に小屋に付与し、見る者に「?」を投げかけているかのようにみえます。そして傑作なのが、屋根妻のヒサシでしょう。サイディングの切り端かなにか正体不明の物体を正面に、それこそドーン!と飾りたて、帽子のツバのような滑稽さを装いながら、建物全体の空気をキリッとひきしめています。いっけん無造作に造っているようですが、よく見るとなかなか意匠なども含めて熟慮されています。

 さらにおもしろいのは、小屋のまわりが、もつれにもつれまくっていることです。キャタツ、熊手、ポリタンク、支柱、白いシートのおおい、ドラム缶などが騒々しく散らばり、まるで小屋の周囲がクーデターを起こしたかのような様相です。「見れば見るほど訳がわからなくなる、この状況の複雑さ」とでも表現すればいいのか、天才バカポンのパパも「これでいいのだ!」と、お手上げになるありさまですが、こんな混迷をきわめたむちゃくちゃな世界を、よくぞつくりあげたものだと、ただただ感心するばかりです。

 この混乱しきった写真、ひょっとして「撮り方のほうに問題があるのでは?」といったことも考えられますが、写真はファインダーの真ん中に被写体の小屋を置いた「日の丸構図」と呼ばれるものです。「初心者は早くこの日の丸構図から卒業しましょう」とか、「何も考えていない構図」といった指摘もあるテクニック以前のもので、つまりは普通の撮り方であって、動きのない、退屈な写真になりがちだとされています。が、どっこい、この小屋では反対に振れ、キャタツや熊手などがあらぬ方向にバラバラに飛び跳ね、見事なまでに無秩序な状態をつくりあげています。まあ、小屋とその仲間たちが、リンゴ園で楽しく収穫感謝祭でもやっていると考えればいいのかもしれません。オーナーもそれを娯楽としてみずから参加しているフシがありますから、これはやはり、小屋を管理運営しているオーナーの力によるものではないか、と考えるわけです。いやいや「コラボというやつではありませんか?」