小屋の旅 004 (雑草の玉手箱)

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 4.雑草の玉手箱
 石川県七尾市の田んぼのアゼに建つ小屋です。「建っている」というよりアゼに「置いてある」といった感じでしょうか。付近に畑らしいものはなく、稲作ではこんなに小さな小屋は役に立たないはずなので、なんに使っているのでしょうか、ちょっと用途不明な謎があるところがおもしろいですね。アゼはけっこう広くとられているので、かつてはここにナスや豆など、野菜類でも植えていたのかもしれません。田んぼのアゼを利用して野菜をつくる習慣は古くからありますから、そのための物置小屋だった、といったことも考えられます。

 小屋は、濃い緑の扉がファサードの半分ほどを占め、白い壁とあいまって、小気味のよいデザインになっています。きわめて小さな部類の建物ですが、簡潔で力強いデザインのおかげで、セイダカアワダチソウやススキなど、押し寄せる雑草の大群にも動じるところがなく、負けていません。正面のひさしの軒先には、細長いホロの切れ端のようなものがぶら下がっています。これは風雨によって雨水が内部に入るのを防ぐためのものと思われますが、小屋のアクセントにもなっていて、表情を豊かにしています。それと、無造作に立て掛けてある垂木の廃材もじゃまな存在ではなく、脇役を上手に演じて主役を引き立てています。ただ、このような短い垂木がなぜここにあるのか、という疑問は残ります。小屋の持ち主は、デザインや意匠などはまったく考えていないと思いますが、それが結果的にいい風景をつくりだしているわけですね。

 そして驚くのが、小屋を取り囲むセイダカアワダチソウです。一時期、花粉アレルギーの健康被害で騒がれたことがある植物ですが、これはぬれぎぬだそうです。スギ花粉のような風で花粉を飛ばす風媒花ではなく、昆虫によって運ばれる虫媒花なので、花粉症や喘息などとは関係ないということのようです。とはいえ、「日本の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれ、どぎつい黄色と旺盛な繁殖力のセイダカアワダチソウは、どちらかというと侵略的で凶暴なイメージがあります。そのような荒々しい植物と、かわいい小屋との組み合わせは、僕は僕、君は君で、お互いにケンカをしているようなふうでもなく、いい感じです。

 この写真を撮ったあと、1年ほど経てから小屋へ行ってみましたが、建物がかなり傷んでいるようでした。風雨の強い海の近くにあることから、傷むのも早いのかもしれません。また、小屋がもとあった場所から20メートルほど東に移動し、向きも90度ほど振られて道路に面して建っていたのも驚きです。場所や向きを変えてみたところで、この小屋の使用上の問題にそれほど影響があるとは思いませんが、小屋の持ち主が自分の気晴らし、気分転換のために小屋の配置を変えたのではないか、と勘ぐりたくもなります。また、前回とは全体の雰囲気が少し違っていた点も気になりました。生気がないというか、やつれたところがあり、持ち主の小屋への気持ちが少し薄れてきたのかなといった印象でした。ぜひ、また一度、訪ねてみたいと思います。